公園の魔法使い
私が次回公演の稽古に行っていた休日のある日、息子の補助輪が取れた。
近所の公園で練習を始め、40分程経過した頃、派手に転んで大泣きしたらしい。
すると、ずっとウォーキングをしていた初老の女性に声をかけられたという。
「ぼく、どうして泣いてるの?おばちゃんずっと見てたけど、大丈夫だよ。乗れてたよ。大丈夫大丈夫」
その言葉を聞いた息子が「最後にもう一回乗ってみる」と自転車にまたがると、まるで魔法がかかった様に、すんなり運転する事が出来たとか。
彼が6年間の人生で初めて出会った、そしてもしかするともう二度と会うことの出来ない、魔法使いだ。
その後も何度か自転車に乗せているが、今の所一度も転んでいない。
「良かったね。頑張ったね」と言ったら、息子は「うん。乗れる様になりたかったから良かった」と言った。
でも、その言葉には「あの、あばあさんに会えて良かった」というニュアンスが見え隠れしていて、なんだかとても嬉しかった。
稽古場の前の広場の木が綺麗になっている。